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サロン開業コラム

美容師・理容師の社会保険は義務?加入条件・手続き・注意点をわかりやすく解説

美容師・理容師の社会保険は義務?加入条件・手続き・注意点をわかりやすく解説
美容室・理容室を経営している人や、これからサロン開業を検討している人にとって「社会保険の加入義務」は避けて通れないテーマです。
法人と個人事業主では条件が異なり、誤った判断をすると後から追徴や是正指導を受ける可能性もあります。
この記事では、美容師・理容師に関係する社会保険の種類や加入条件、手続きの流れをわかりやすく紹介します。

美容師・理容師が関わる社会保険の基本を整理

美容師・理容師が関わる社会保険の基本を整理 美容師・理容師が関わる社会保険の基本を整理
美容室・理容室で関係する社会保険は4種類あり、それぞれ役割や適用範囲が異なります。
まずは、基本を押さえることで、採用や雇用契約時の判断がスムーズになります。

健康保険

健康保険は、病気やケガの治療費の一部(原則3割)を自己負担に抑えられる制度です。
従業員本人だけでなく扶養家族にも適用されるため、スタッフが安心して働ける基盤になります。
保険料は事業主と従業員が折半する仕組みとなっており、雇用する側に一定の負担が生じる点も把握しておきましょう。

参考:厚生労働省「我が国の医療保険について」
   協会けんぽ「こんな時に健保」

厚生年金

厚生年金は老後・障害・死亡時の生活を支える制度で、国民年金より給付額が高くなるのが特徴です。
将来の安心につながるため、スタッフからの信頼を確保しやすい制度でもあります。
適用対象は法人・一定条件を満たす個人事業主で、健保同様に保険料は事業主と従業員で折半します。

参考:日本年金機構「適用事業所と被保険者」
   厚生労働省「国民年金と厚生年金の仕組み」

雇用保険

雇用保険は、失業時・育児休業時などに給付金を受け取れる制度です。
スタッフの生活を守る役割があり、採用時の安心材料としても強い効果があります。
週20時間以上働くスタッフは対象になることが多いため、雇用契約時に該当するかを確認しましょう。

参考:厚生労働省「雇用保険制度」

労災保険

労災保険は、業務中や通勤途中でのケガ・事故を補償する制度です。
美容室・理容室はハサミ・薬剤・転倒リスクなどがあるため、労災の加入は欠かせません。
保険料は事業主が全額負担する仕組みで、スタッフの人数に関係なく加入義務が生じます。

参考:厚生労働省「労災補償」 

スタッフ採用時に確認すべき社会保険加入の条件

スタッフ採用時に確認すべき社会保険加入の条件 スタッフ採用時に確認すべき社会保険加入の条件
美容室・理容室でスタッフを採用する際は、勤務条件や雇用形態によって社会保険の加入義務が変わります。
特に、パート・アルバイト・業務委託など、多様な働き方が混在しやすい業界だからこそ、判断基準を正しく理解しておくことが重要です。
ここでは、加入対象の判断ポイントと注意すべき契約形態を整理します。

勤務条件によって加入対象が決まる

スタッフが社会保険に加入するかどうかは、労働時間・収入・契約期間・学生でないことといった条件で決まります。主な基準は次のとおりです。

・週20時間以上の勤務
・月額賃金が8.8万円以上
・雇用期間が2か月以上見込まれる
・学生ではない(例外あり)

社会保険加入の条件を満たす場合、パートやアルバイトでも加入が必要になるケースがあります。
採用時に労働時間や給与体系を明確にし、加入対象となるかを事前に判断しておきましょう。

参考:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
   ねんきんネット「適用事業所と被保険者」

法人・個人事業によって異なる

社会保険の加入義務は、事業の形態によっても変わります。

・法人(株式会社・合同会社など)
→ 常に社会保険の強制適用事業所となり、スタッフが1名でも加入が必要。
・個人事業主(美容室・理容室オーナー)
→ 常勤スタッフが「5人以上」で義務が発生。
  5人未満のサロンは任意適用(加入するか選択可能)

この違いを理解していないと、後から「未加入」の指摘を受け、追徴保険料が発生することもあります。
開業前に、自分の事業形態で必要な手続きを確認しておきましょう。

参考:日本年金機構「任意適用申請の手続き」
   厚生労働省「社会保険適用拡大 対象となる事業所・従業員について」

業務委託・フリーランス契約の扱いに注意

美容師・理容師の働き方として多い業務委託やフリーランス契約ですが、契約書の形式だけで判断するのは危険です。
実態として雇用に近いと見なされる場合、社会保険の加入対象となる可能性があります。
たとえば、
・勤務時間が決められている
・店舗設備を無償で使用している
・報酬が歩合ではなく時給に近い形
・仕事の指示に従わないと勤務できない

といった場合、雇用関係と判断されるリスクが出てきます。
契約形態が複雑になりやすいため、労務トラブルを避けるためにも、勤務実態に沿った判断をするよう意識しましょう。

参考:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
   独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査」

美容室・理容室が行う社会保険の手続きと期限

美容室・理容室が行う社会保険の手続きと期限 美容室・理容室が行う社会保険の手続きと期限
美容室・理容室でスタッフを雇用する場合、社会保険に関する届け出は「法人」と「加入義務が発生する個人事業主」の双方に求められます。
特に、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険は、それぞれ提出先や期限が決まっているため、開業前に一度整理しておくと安心です。
ここでは、加入が必要になった際の具体的な流れを紹介します。

健康保険・厚生年金の手続き

健康保険と厚生年金は、法人の場合はスタッフが1名でもいる時点で加入が義務となり、個人事業主は常勤スタッフが5人以上になったタイミングで適用が始まります。
加入が必要になったら、日本年金機構へ「新規適用届」と「資格取得届」を提出します。いずれも義務が発生した日から5日以内に届け出るのが原則で、遅れると是正指導を受ける可能性があります。
開業してすぐ必要になる手続きであるため、事前に要件を確認しておくことが大切です。

参考:日本年金機構「新規適用の手続き」
   日本年金機構「1-1:事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき」

雇用保険の手続き

雇用保険は、スタッフの雇用が始まった時点でハローワークへの手続きが必要になります。事業所として雇用保険を適用するための「適用事業所設置届」と、個々のスタッフを加入させるための「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。被保険者証が発行されるまでに2〜3週間かかる場合もあるため、採用後すぐに進めておくとスムーズです。

参考:厚生労働省「事業主の行う雇用保険の手続き」

労災保険の手続き

労災保険は、法人か個人か、スタッフの人数に関わらず、従業員を1名雇った時点で必ず加入しなければなりません。
手続きは労働基準監督署で行い、「労働保険関係成立届」と「概算保険料申告書」を提出します。
美容室・理容室では作業中の転倒や薬剤トラブルなどのリスクがあるため、開業直後から加入しておけば、万が一の事故時でも適切に補償を受けられる体制を整えられます。

参考:厚生労働省「労働保険の成立手続」
   厚生労働省「労働保険(雇用保険・労災保険)新規加入手続きについて」

社会保険料の負担とコストの考え方

社会保険料の負担とコストの考え方 社会保険料の負担とコストの考え方
社会保険に加入すると、事業主にも従業員にも保険料の負担が生じます。
特に、美容室・理容室のように人件費率が高い業種では、保険料の仕組みを理解したうえで労務コストを計画に組み込むことが重要です。
ここでは、事業主として押さえておきたい負担構造と、短時間勤務者の適用による影響を整理します。

労使折半が原則

健康保険と厚生年金の保険料は「労使折半」が原則で、事業主と従業員が半分ずつ負担します。
雇用保険は事業主と従業員の双方が負担しますが、割合は事業主のほうが高めに設定されています。さらに、労災保険の保険料は全額を事業主が負担する仕組みです。
美容室・理容室はスタッフの人数によって負担額が変動します。採用計画や給与設計をする際には、社会保険料を含めた「総人件費」を基準に考えると、経営の見通しを立てやすくなるでしょう。

参考:協会けんぽ「保険料率一覧」

短時間勤務者の適用でコストが変わる

短時間勤務者に対する社会保険の適用拡大が進み、パートやアルバイトであっても一定の条件を満たせば健康保険・厚生年金の加入対象になります。
加入者が増えると、事業主の社会保険料負担も増加するため、労務コストの変化を把握しておくことが大切です。
美容室・理容室はシフト制で短時間勤務のスタッフが多い傾向があるため、誰が加入対象になるのかを定期的に確認しておくと安心です。
制度拡大に関する情報は、厚生労働省や年金機構の資料で最新のルールをチェックできます。

参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査」
  年金ネット「被用者保険の適用拡大に関する説明資料」

社会保険完備が採用・定着に与える影響

社会保険完備が採用・定着に与える影響 社会保険完備が採用・定着に与える影響
社会保険はスタッフの生活を支える制度であり、美容室・理容室の採用力や定着率にも強く影響します。
雇用環境の差が応募数に直結するため、社会保険完備を整えておくことが、長期的な経営の安定にもつながるでしょう。
ここでは採用面・労働環境面の2つからその効果を確認します。 

応募数・内定承諾率が上がる

 求人に「社会保険完備」と記載できることは、大きな信頼指標になります。
帝国データバンクの調査でも、福利厚生の充実は求職者の応募意欲を高める要因として挙げられており、採用競争力を上げるためにも欠かせません。
美容業界は離職率が高いと言われる傾向があるため、安心して働ける雇用環境を示すことで、応募数や内定承諾率が向上しやすくなります。

安心して働ける職場づくりにつながる

社会保険に加入していると、病気・ケガ・出産・育児など、生活の節目で必要な補償を受けられます。
スタッフが長く働くうえで「いざというときに守られる」環境は非常に重要です。
保障が整っているサロンほど離職率が下がり、結果として教育コストの削減や顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
美容室・理容室の規模に関わらず、社会保険完備は働く人の安心感を高め、店舗全体の安定運営に寄与する制度です。

参考:帝国データバンク「福利厚生に関する企業の実態調査」 

社会保険の相談先を確認しておこう

社会保険の相談先を確認しておこう 社会保険の相談先を確認しておこう
 社会保険の制度や手続きは複雑な部分が多く、開業準備やスタッフ採用が初めての人にとって迷いやすい分野です。
加入義務の判断や必要書類の準備に不安がある場合は、公的機関の窓口で確認しましょう。
ここでは、相談内容に応じた主な窓口を紹介します。

日本年金機構(健康保険・厚生年金)

健康保険や厚生年金の加入条件、適用範囲、手続きに関する相談を受け付けています。
事業所の適用可否や必要書類の確認をしたい場合に最適な窓口です。 

協会けんぽ(保険証・給付関連)

保険証の発行・切替、傷病手当金の申請など、給付に関する手続きについて相談できます。
スタッフの家族の扶養に関する質問にも対応しています。 

ハローワーク(雇用保険)

 雇用保険の適用手続き、従業員の資格取得・喪失手続き、助成金制度の確認などをしたい場合に便利です。
採用時の要件確認にも役立ちます。

労働基準監督署(労災保険)

労災保険の加入手続きや給付内容について相談可能です。
業務中の事故やけがの補償に関する疑問があれば、最初に確認しておきたい窓口です。 

美容室・理容室開業の相談はタカラベルモントへ

美容室・理容室開業の相談はタカラベルモントへ 美容室・理容室開業の相談はタカラベルモントへ
美容室・理容室を開業するときは、社会保険の加入や労務管理など、施術以外の部分で不安を感じる場面が多くあります。
タカラベルモントでは、資金計画や物件探し、労務に関する相談まで、一つの窓口でまとめて相談できます。
専門スタッフが開業プランを一緒に整理してくれるため、初めての開業でも段階的に準備が進められるのが特徴です。
サロンづくりに集中したい人にとって、心強い伴走者となるでしょう。

まとめ

社会保険はスタッフの生活を守るだけでなく、美容室・理容室の信頼性や採用力を高める重要な要素です。
法人か個人事業主かによって加入義務が異なるため、自分のサロンの状況を正しく把握しておくことが第一歩になります。
制度の目的や手続きの流れを押さえておけば、スタッフが安心して働ける環境を整えやすくなり、結果として経営の安定にもつながります。
必要に応じて公的機関に相談し、適切な労務管理を進めていきましょう。

タカラベルモント株式会社 山本 麻仁

この記事の監修者

タカラベルモント株式会社 理美容サロン開業支援担当
山本 麻仁

理美容機器の営業を経て、現在はサロンの開業支援に従事。
主に東日本エリアで、多くの理美容サロンの開業をサポートしている。

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