「優秀な美容師は優秀な経営者にはなれない」
そんな固定概念を覆したい
今泉 直裕 さん / 「Natural hair designing」オーナー
「優秀な美容師は優秀な経営者にはなれない」
そんな固定概念を覆したい
今泉 直裕 さん / 「Natural hair designing」オーナー
今泉 直裕〈いまいずみ なおひろ〉さん … 茨城県土浦市出身。小学校2年生の頃、理容室で刈り上げにされ「もう理容室には行かない」と決意。「理容室に行かなくて済むように美容師になろう」と美容師を目指すように。高校卒業後、都内のサロンに勤務しながら、通信課程で美容師免許を取得。その後、大型美容室に入社し、24歳の時に新店の店長に抜擢される。28歳で独立し、それまで勤務していたサロンのある宇都宮にNatural hair designingをオープン。2015年10月には、地元 茨城県土浦市に2店舗目となるLumiere by Naturalを開く。「10年間で10店舗」を目標に掲げ、2017年5月に3店舗目のオープンを目指している。
以前勤めていた会社で、「独立するか、フランチャイズオーナーになるか」という選択肢を与えられ、独立することを選びました。フランチャイズだと自分の色が出せないと思ったし、自らの力で作り上げていくことに価値を感じたんです。確信はないけれど、勝てるような気もしていました。1店舗目のオープン初月には、1人で220万円の売上を達成。1ヶ月目から黒字にすることができましたが、その一方で、「1人では何もできない」とスタッフの大切さにも気づきました。
4名の代表と5名のフランチャイズオーナーを輩出し、それぞれに店舗を任せることも目標に掲げています。オーナーには、1店舗の主として活躍してほしい。楽しんで経営してほしいし、プレーヤーとしても楽しんでほしい。以前の職場の上司が言っていた「優秀な美容師は優秀な経営者にはなれない」という固定概念を覆したいんです。作りたいのは、“1人になっても絶対にやっていける店”。家賃比率や材料費などもこの考えに基づいて決めています。スタッフが増えて生産性が上がればもちろん利益になりますし、もし1人になっても、安定した売上とマーケティングさえ守っていれば大丈夫です。
2店舗目を土浦に出店したのは、地元の仲間に「なんでこっち(土浦)に出店しないの?」と言われたのがきっかけでした。「地元で」というよりは、チャンスと環境さえあればどこでも良かったというのが正直なところ。サロンのお客様をマーケットとして確立すれば、出店する地域が違っていても、やることは最終的に一緒です。僕が大事にしているのは、県民性。たとえば、茨城県では新しいものが好かれるから、折込チラシが効果的だし、ネット検索で上位に上がるプランの評判がいい。栃木県は、新しいものよりも歴史のある店舗や口コミ、紹介などが好かれる傾向にある。その土地に合わせたSEO対策などを講じています。
独立前から、経営の勉強はしていました。地域による反応の違いや成功の実例、成功した人がどう動いたかを見て学んでいます。1店舗目も2店舗目も、立地は良いわけではありません。ただ、今はカーナビやマップもあるから、たどり着けないことはないんじゃないか。そう考えて、駅前集客は無視しました。あとは、人に任せる勇気を持つこと。たとえば、今、土浦のサロンは、数字の管理なども含め、自社の役員である代表に任せています。第2第4金曜日には僕も土浦のサロンに出ますが、それは地元の仲間や紹介してもらった方を担当する時間。これから組織を大きくするためにも、スタッフにすべてを任せることが必要だと感じています。
頭の中で判断するのは、◯か×かだけ。△はありません。迷っていたり、心にざわっと残るものがあるうちは絶対に行動しません。ただし、◯と判断したら絶対に行動に移します。直感的ですが、人生は◯か×しかない、悩んだら負けだと思っています。それが、結果的に行動の速さにつながっているのかもしれません。
サロン作りに関して、僕はほぼ口を出しません。基本的に丸投げしています。“美容室を作るプロ”に任せているんです。自分の中で固定概念が強くなると、同じものしかできなくなってしまう。それが絶対的に勝算のあるデザインなのかというと、そうではないですよね。時代が変われば、流行りも変わる。僕からは、予算のほか、セット面の数や「デザインはシンプルに」とか、最低限の希望を伝えます。その中で最大限の仕事をしてくれるのがタカラさんです。
店舗ごとに必ず、月に200万円以上売り上げるカリスマ美容師を作りたいと思っています。美容師の卵がそのカリスマに憧れて入社する、その背景を作りたい。入ったばかりの若い子にも夢を与えられる環境を整えたいです。僕が与えるのは、安定して売り上げるためのノウハウ。美容師は、勉強すればするほどそれが魅力につながり、価値が上がります。だから、僕は経営講習だけではなくカット講習にも毎週行くし、それをスタッフに落とし込んでいます。美容師は魅力的なヘアデザインを提供するクリエイターです。最新のデザインを学ぶことができ、さらに雇用体系もしっかりしたサロンになれば、そこに価値が生まれるのではないかと思っています。
宇都宮のサロンは13坪ほどの広さですが、現在10名のスタッフが働いています。紹介などで入社してくれたスタッフは、このサロンにチャンスを感じて入りたいと思ってくれたはず。今度は、TOPである僕が下の子たちにチャンスを与える番です。夢を持ったスタッフが集まってくれたから、出店する。とてもシンプルですが、僕にとって出店はそういう意味を持っているのかなと感じています。3店舗目のオープンは今年5月。実はまだ物件が決まっていないのですが、必ずオープンさせます。
「10年間で10店舗」数値目標の達成だけなら、M&Aという手もあるかもしれない。でも、自分の意思が伝わるかというと、それは違う。一からスタッフを集めて、時には石橋を叩きながら、増えていく店舗に愛着を感じるところに価値があると思っています。
オーナー業の傍ら、今も、週休2日でサロンワークを続けています。担当するのは指名のお客様のみですが、月の平均売上300万円はキープしています。僕が“10店舗経営しつつ、笑いながらサロンに出ているオーナー”になれれば、それが通ってくださるお客様にとってのステータスにもなると思うんです。
Natural hair designing
2013年10月開業 / 美容室
栃木県宇都宮市
website : http://natural-hairdesigning.com/
(2店舗目「Lumiere by Natural」2016年9月開業 / 美容室)